食肉の栄養 栄養学と糖質制限
九州食肉学問所 学長

九州食肉学問所 学長です。これまで、たんぱく質、脂質、糖質と学んできました。今回はそのまとめとして、食べたものがどのようにエネルギーになるのかを見ていきます。

2026年の訂正について

この記事は2014年当時の文章をなるべく残し、2026年時点の知見と合わない部分を訂正しています。取り消し線が当時の記述、色のついた部分と「2026年の訂正」の枠が訂正した内容です。

前回までで、いまの食生活では太る原因が糖質にあることもわかりました。人間が健康に生きていくうえで、適切な栄養をとることはとても大切です。栄養というと、食品に含まれる栄養成分を思い浮かべるかもしれません。栄養、そして栄養学とは、なんなのでしょう。

栄養学における「栄養」とは

栄養学でいう栄養とは、消化→吸収→代謝→排泄、つまり、ある栄養素を口にしてから、それが消化され、吸収され、エネルギーとして代謝され、いらないものが排泄されるまでのことをいいます。

私もそうでしたが、毎日口にするものがどうやってエネルギーになり、排泄されるのか、まったく知りませんでした。でも、そこに医者いらずで健康に生きる秘訣が書かれています(お医者さんが必要ないということではありません)。難しく言うとどんどん難しくなるので、ここでは簡単に学んでいきます。

3大栄養素は、たんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)でした。5大栄養素は、これに次の2つを加えたものです。

  • ビタミン(有機質)、フィトケミカル→ (野菜などに含まれるフィトケミカルは、5大栄養素には含まれません)
  • ミネラル(無機質)

ビタミンとミネラルは次回以降で扱います。今回は、たんぱく質、脂質、糖質がどのように消化され、エネルギーになるのかを見ていきます。

消化・吸収・代謝・排泄

  • 消化:口、胃、小腸で、食べた栄養素が吸収しやすい小さな分子に分解されること
  • 吸収:主に小腸の上皮細胞から吸収されて血液に溶け込み、肝臓に集められ、心臓を経由して全身の細胞まで送られること
  • 代謝:細胞が栄養素を、細胞自体の作り直しや、エネルギーとして使うこと
  • 排泄:腸で吸収されなかった残りかすは便として、細胞でできた老廃物は腎臓でろ過されて尿として、体の外に出ること

人間が健康に生きていくには、細胞が新しいものに作り替えられ、エネルギーを効率よく使っていく必要があります。必要なものを、きちんと食べなくてはいけません。

たんぱく質も脂質も糖質も、基本的には炭素(C)、酸素(O)、水素(H)が結合してできています。これらがエネルギーに変わるには、十分なビタミンや鉄分が必要です。水や酸素も必要です。とくにリン酸(P)は、エネルギーづくりと深くかかわっています。この点はまたの機会にふれます。

脂質・たんぱく質・糖質からエネルギーがつくられる経路

たんぱく質の消化と代謝

たんぱく質はペプチドを経てアミノ酸に分解されて吸収される

たんぱく質は、消化されて吸収されるために、ポリペプチド、オリゴペプチドを経て、最終的にアミノ酸に分解されます。小腸の上皮細胞で吸収され、毛細血管から門脈を経て肝臓に送られます。

アミノ酸は、「アミノ基転移反応」によってα-ケト酸とグルタミン酸になります。(α-ケト酸には、ピルビン酸、オキサロ酢酸、アセチルCoA、α-ケトグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、アセト酢酸などがあります。)→ (アミノ酸の炭素の骨格は、ピルビン酸、アセチルCoA、アセト酢酸、TCA回路の物質(α-ケトグルタル酸、スクシニルCoA、フマル酸、オキサロ酢酸)などになります。)α-ケト酸(ピルビン酸など)は、ミトコンドリアの中でアセチルCoAになって、TCA回路(クエン酸回路)でエネルギーとして使われます。この一連の流れを、α-ケト酸の代謝と呼びます。

グルタミン酸は、酸化的脱アミノ反応によってα-ケトグルタル酸とアンモニアになります。α-ケトグルタル酸は、ふたたびアミノ基転移反応に使われます。アンモニアは無毒化されて尿素になり、体の外に出ていきます。

また、α-ケト酸(ピルビン酸など)は「糖新生」によってグルコースの原料にもなり、脂肪酸の原料にもなります。これは後ほどご説明します。

脂質の消化・吸収と代謝

中性脂肪は脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解される

脂質は、ほとんどが中性脂肪(トリアシルグリセロール)です。中性脂肪は、膵液によって脂肪酸とモノアシルグリセロールに分解されます。

脂肪酸の代謝

脂肪酸は、β酸化を経てアセチルCoAに分解され、TCA回路に入ってエネルギーになります。アセチルCoAは、肝臓のミトコンドリアでケトン体になることもあります。ケトン体は血液で肝臓の外の組織に運ばれ、エネルギー源として使われます。糖質(グルコース)が足りない絶食時、激しい運動時、高脂肪食のときにも、ケトン体がつくられます。アセチルCoAが、ふたたび飽和脂肪酸に合成されることもあります。

ココナッツオイルなどに多い中鎖脂肪酸の場合は、膵液(リパーゼ)でグリセロールと中鎖脂肪酸になり、ミセルをつくらずに小腸の上皮細胞で吸収され、門脈を通って肝臓に運ばれ、エネルギーになります。

グリセロールの代謝

モノアシルグリセロールは、胆汁によっていったんミセルになり、小腸の上皮細胞で吸収されます。その後ふたたび合成され、リンパ管を通って静脈に合流します。グリセロールは、糖新生によってグルコースとなり、エネルギーになります。

とりすぎた脂肪は体に吸収されず、下痢となって体の外に出ます。とんこつラーメンのスープをたくさん飲んだ日や、脂っこい焼肉を食べた翌日に下痢気味になるのは、このせいです(笑)。

食べた脂肪は、ふつう9割以上が吸収されるので、とりすぎればやはり体にたくわえられます。脂っこい食事のあとにおなかがゆるくなるのは、一度にたくさんとって消化が追いつかないことがあるためです。

糖質の消化・吸収と代謝

糖質のエネルギー代謝はとても複雑ですが、基本的には「解糖系」と「TCA回路」の2つに大きく分かれます。

解糖系

解糖系のエネルギー代謝

炭水化物は消化されるときに糖質と食物繊維に分かれ、糖質は最終的に単糖のグルコース(ぶどう糖)になって吸収されます。

グリコーゲンも、解糖系でエネルギーとして使われます。グリコーゲンは、エネルギーの候補として体にたくわえられたグルコースがつながったもので、肝臓や骨格→ 骨格筋で合成されます。ただし貯蔵にはあまり向かず、食後の一時的な血糖の余りに対応するものです。貯蔵には脂肪が最適で、余った糖質はインスリンによってせっせと脂肪に変えられます。

吸収されたグルコースは、細胞の中で「ATP」という分子になり、エネルギーとして使われます。解糖系は、酸素がない状態(全力ダッシュをしているときなど)でもエネルギーをつくれます。

TCA回路

TCA回路のエネルギー代謝

酸素が十分にある状態では、グルコースはピルビン酸、アセチルCoAとなって、ミトコンドリアの中のTCA回路に入り、エネルギーとして使われます。解糖系だけでは、糖質が持っているエネルギーの大半がむだになります。解糖系でできる乳酸なども、TCA回路で最大限エネルギーとして活用できます。TCA回路は、さきほど見たように、たんぱく質や脂質からできるアセチルCoAにも使われます。

糖新生

糖質制限食などで食事からのグルコースがなくなり、さらに肝臓にたくわえたグリコーゲンも使い果たすと、肝臓(量は少ないですが腎臓も)は、糖以外のものから糖をつくり出します。これを「糖新生」といいます。食事をしてから数時間後には、かなりの割合の糖をつくり出しています。解糖系でできたピルビン酸や乳酸、TCA回路の中の物質、アミノ酸、グリセロールなどが、糖新生によって糖になります。

人間の体は、糖質がなくても、ほかの栄養素から必要な糖をかなりの量つくり出すことができます。たんぱく質と脂質、そのほかの栄養をしっかりとっていれば、糖質(炭水化物)は外からとる必要はありません。むしろ体の中の内臓脂肪を使うことで、健康的な体になるのです。いまの食生活では、糖質は余って脂肪に変わるだけです。

一方で、国の「日本人の食事摂取基準」では、炭水化物の目標量を総エネルギーの50〜65%としています。糖質制限を行うときは、体調を見ながら、持病のある方は医師に相談して進めましょう。

バランスと量が問題

小麦粉や白米などの炭水化物にも、もちろんたんぱく質や脂質は含まれています。問題なのはバランスと量です。

お肉と小麦粉のアミノ酸スコアとたんぱく質量のくらべ

図の「小麦粉=35点」「9gから3のアミノ酸」は、古い評価方法による2014年当時の数字です。いまの評価方法では、小麦のアミノ酸スコアは、リジンが少ないため100に届かない、という表し方になります。

お肉のアミノ酸スコアは100点です。つまり100とれば、必須アミノ酸すべてを100(またはそれ以上)とれます。これに対して、小麦粉のアミノ酸スコアは35点です。100とっても、必須アミノ酸はすべて35しかとれません。→ リジンが少ないため、100に届きません。しかも小麦粉には、アミノ酸のもとになるたんぱく質が100gあたり9gほどしかありません。牛肉は100gあたり20gほどのたんぱく質を含みます。つまり、お肉100gと同じアミノ酸を小麦粉でとるには、お肉の6〜7倍も→ 何倍も食べなくてはいけないことになります。そうなれば、糖質のとりすぎになります。

また、「糖質が糖質を呼ぶ」という言葉もあります。たんぱく質や脂質の少ない、糖質中心の食生活では、食事の満足感が低くなります。小腹がすいて、つい甘いものを食べたり、清涼飲料水を飲んだりします。そしてそれが、さらに糖質をほしがるように脳を刺激します。→ するといわれています。

糖質のとりすぎと内臓脂肪型肥満

糖質のとりすぎは、メタボリックシンドロームと呼ばれる内臓脂肪型の肥満を招きます。最悪の場合には糖尿病になり、痛風になり、心臓病などの生活習慣病を引き起こします。→ こうした肥満は、糖尿病や心臓病などの生活習慣病の原因になります。

→ 九州食肉学問所は、お肉や卵からしっかりとたんぱく質と脂質、そのほかの栄養素を補い、糖質を控えることが、現代人に求められる食生活なのです。→ 現代人に合った食生活だと考えています。

学問所通信では、ここまで3大栄養素とそのエネルギー代謝を追ってきました。次回以降は、ビタミンや鉄分などにふれていきます。これらも、お肉の栄養素として、また人間が健康に生きていくためにも、とても大切な栄養素です。


この記事は、九州肉屋.jpの連載「学問所通信」第13回(2015年1月)を、2026年に加筆・更新したものです。

参考:たんぱく質・アミノ酸の働きと1日の摂取量(健康長寿ネット)/日本人の食事摂取基準の紹介(農林水産省)

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