食肉の栄養 たんぱく質編
九州食肉学問所 学長

九州食肉学問所 学長です。今回から、お肉の栄養についてのシリーズです。人が元気に生きていくには、栄養をバランスよくとることが欠かせません。第1回は「たんぱく質」です。

栄養ってなんだろう

3大栄養素:糖質(エネルギーの生産)、たんぱく質(体の構成成分・筋肉)、脂質(エネルギーの生産、体の構成成分・脂肪)

栄養素には「3大栄養素」と呼ばれる、糖質、たんぱく質、脂質があります。お肉には糖質がほとんど含まれず、たんぱく質と脂質が豊富です。

脂質には、糖質と同じようにエネルギーを生み出す役割があります。また、たんぱく質が筋肉として体をつくるのと同じように、脂質は脂肪として体をつくる成分になります。

お肉の脂で太る?

「お肉の脂をたくさんとると太る」とよくいわれますが、太る原因は脂だけではありません。

糖質(=炭水化物−食物繊維)をとりすぎると、使われずに余った糖質(ぶどう糖)は、すい臓から出るインスリンの働きで脂肪に変えられ、脂肪細胞にたくわえられます。これが、内臓脂肪や皮下脂肪が増える大きな原因のひとつです。逆に糖質を控えると、すい臓からはグルカゴンなどが出て、体は脂肪を燃やしてエネルギーにしやすくなります。

5大栄養素と、糖質

3大栄養素に、無機質(ミネラル)とビタミンを加えたものを「5大栄養素」と呼びます。

糖質のとりすぎは、肥満や生活習慣病の一因になるといわれています。お肉には、その糖質がほとんど含まれていません。実は人間の体も同じで、体の中にある糖質はわずかです。しかも人間は、たんぱく質や脂質(の一部)から、体の中で糖質をつくることができます。

このシリーズでは、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンについて順番にご紹介していきます。

たんぱく質は体をつくる材料

たんぱく質には、球状たんぱく質(ヘモグロビン、免疫グロブリンなど)と、線維状たんぱく質(コラーゲン、ケラチンなど)があります。筋肉は線維状たんぱく質でできていて、水に溶けにくく丈夫です。

人の体は約60%が水分で、たんぱく質は体重の15〜20%ほど、水分を除いた重さでは半分近くを占めています。不足すると体力が落ち、病気にかかりやすくなります。

体のたんぱく質は、毎日分解されては新しく作り直されていて、その一部は尿などとして体の外に出ていきます。そのため、毎日食事で補う必要があります。国の「日本人の食事摂取基準」では、1日の推奨量を、成人男性65g(65歳以上は60g)、成人女性50gとしています。高齢の方は、体の衰え(フレイル)を防ぐため、とる量の目安が高めに設定されています。

たんぱく質の分解と吸収

食べたたんぱく質は、アミノ酸(やペプチド)に分解されて吸収され、肝臓などで体に必要なたんぱく質に作り直されます。

たんぱく質のいろいろな働き

  • 血管をしなやかに:血管は年齢とともに弾力が落ちていきますが、十分なたんぱく質は、血管を丈夫でしなやかに保つのに役立つと考えられています。
  • 肝臓を元気に:肝臓のたんぱく質は、約2週間で半分が新しいものに入れ替わるといわれています。毎日しっかりたんぱく質をとらないと、弱っていってしまいます。

アミノ酸と「アミノ酸スコア」

アミノ酸の種類

たんぱく質は、約20種類のアミノ酸に分解されます。そのうち9種類は、人間の体の中ではつくれない「必須アミノ酸」です。

たんぱく質が良質かどうかは、この必須アミノ酸がバランスよく含まれているかで決まります。このバランスのよさを表すのが「アミノ酸スコア」です。

牛肉・豚肉・鶏肉100
卵100
お米・小麦100に届かない(リジンが少ないため)

牛肉、豚肉、鶏肉は、アミノ酸スコアが100点満点です。しかも糖質が少ない、すぐれものです。また、アミノ酸のひとつトリプトファンは、心を安定させるうえでもとても大切な役目をになっています。

一方で、お米や小麦は、糖質が多く、たんぱく質が少ないうえに、必須アミノ酸のひとつリジンが少ないため、アミノ酸スコアが100に届きません。

いちばん少ないアミノ酸で決まる「桶の理論」

アミノ酸スコアは、必須アミノ酸のうち、もっとも足りないものの点数で決まります。体のたんぱく質をつくるとき、ほかの必須アミノ酸がたっぷりあっても、いちばん足りないアミノ酸の分までしか利用できないからです。

小麦を例にすると、ほかの必須アミノ酸は十分でも、リジンが少ないため、そのぶんしかたんぱく質づくりに利用できません。利用されなかったアミノ酸は、エネルギーとして使われたり、体の外に出たりします。たんぱく質を補うには効率がよくないうえに、糖質も多いのです。

これはよく「桶の理論」と呼ばれます。9つの必須アミノ酸を、桶をつくる板だと考えてください。ほかの板がどれだけ高くても、1枚だけ短い板があれば、水はその高さまでしかたまらず、あとは流れ出てしまいます。

植物性たんぱく質について

たんぱく質には、植物性たんぱく質もあります。植物性たんぱく質は、穀物ではリジン、豆類ではメチオニンが少なめで、アミノ酸のバランスがお肉に劣ります。メチオニンは、体がたんぱく質をつくるときに最初に使われる、大切なアミノ酸です。

大豆たんぱくも植物性たんぱく質ですが、大豆には「フィチン酸塩」という物質が含まれています。これはカルシウムなど、ほかのミネラルの吸収をさまたげる働きがあるとされています。また大豆イソフラボンは、ふだんの大豆食品なら心配いりませんが、サプリメントなどでのとりすぎには注意が必要とされています。植物性たんぱく質は、たんぱく質源としてはお肉ほど効率がよくありません。

まとめ

お肉は、低糖質・高たんぱく(アミノ酸スコア100)のすぐれた食材です。しっかり食べて、たんぱく質を補いましょう。なお、脂肪の量は部位や育て方によって大きく変わります。脂質については、次回くわしくお話しします。


この記事は、九州肉屋.jpの連載「学問所通信」第10回(2014年10月)を、2026年に加筆・更新したものです。

参考:たんぱく質・アミノ酸の働きと1日の摂取量(健康長寿ネット)/大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(厚生労働省)

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