食肉の栄養 糖質(炭水化物)編
九州食肉学問所 学長

九州食肉学問所 学長です。前回は「脂質」をご紹介しました。今回は「糖質(炭水化物)」です。

2026年の訂正について

この記事は2014年当時の文章をなるべく残し、2026年時点の知見と合わない部分を訂正しています。取り消し線が当時の記述、色のついた部分と「2026年の訂正」の枠が訂正した内容です。

糖質ってなんだろう

炭水化物のうち、食物繊維を除いた残りが糖質です。炭水化物≒糖質と考えてもよいほどです。すぐに思いつくのは砂糖ですね。甘いので、糖質という言葉から想像がつくかもしれません。びっくりするかもしれませんが、じゃがいもやお米なども、実はほとんどが糖質なのです。

前々回と前回で、たんぱく質と脂質を見てきました。人間が体の中でつくれず、食事からとらなければならない「必須アミノ酸」と「必須脂肪酸」がありました。

実は驚くことに、「必須糖質」というものはありません。人間は、糖質を外からとらなくても、たんぱく質と脂質からエネルギーをつくって活動することができるのです。

一方で、国の「日本人の食事摂取基準」では、炭水化物の目標量を総エネルギーの50〜65%としています。糖質制限を行うときは、体調を見ながら、持病のある方は医師に相談して進めましょう。

糖質制限ダイエットと「隠れ糖質」

糖質制限ダイエットというものがあります。糖質を制限してもなかなかやせない、成果が出ないという方も多くいます。実は、知らないうちに「隠れ糖質」をとっている場合があります。

たとえば、じゃがいもや里芋。知っていれば、じゃがいもは糖質のかたまりだとわかりますが、知らないと、むしろダイエットと称して積極的にとってしまっているかもしれません。これらはでんぷんでできていて、体に吸収されるときにはグルコース(ぶどう糖)になります。また、唐揚げやとんかつの衣(揚げ粉やパン粉)も糖質です。

ケーキなどは甘いので糖質と結びつけやすいのですが、意識しないと、糖質は食品のあらゆるところに潜んでいます。しっかり学んで、よい食生活を送れるようにしたいですね。

炭水化物の種類

炭水化物の主な分類

炭水化物は「糖質+食物繊維」です。糖質には、単糖類、少糖類、多糖類などが含まれます。また「糖類」には、単糖類と、少糖類のうちの二糖類が含まれます。

単糖類

単糖類には、グルコース(ぶどう糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースがあります。単糖類は炭素の数によって三炭糖から七炭糖まであり、特に大切なのは五炭糖(ペントース)と六炭糖(ヘキソース)です。グルコース、フルクトース、ガラクトースは六炭糖です。

単糖の一部が変化した化合物を「誘導糖」といいます。誘導糖には、アミノ糖(グルコサミン)、ウロン酸、糖アルコールがあります。糖アルコールについては後でお話しします。

単糖類は、構造によってアルドースとケトースに分けられます。単糖類は炭素が3〜7個つながってできていて、端の炭素がアルデヒド基(-CHO)になっているものをアルドース、2番目の炭素がケトン(>C=O)になっているものをケトースと呼びます。アルデヒド基やケトンになっている炭素以外の炭素には、水素(H)か一酸化水素(OH)→ ヒドロキシ基(-OH)が結合しています。たとえば、グルコースはアルドース、フルクトースはケトースです。

ピラノースとフラノースは、輪の形(環状構造)のことです。グルコースはふだん一直線ではなく、輪のような形をしていて、これをピラノース環と呼びます。グルコースがピラノース環になったものをグルコピラノース、フラノース環になったものをグルコフラノースと呼びます。

五炭糖には、リボースやデオキシリボースといった、核酸の成分になる糖があります。リボースはRNA、デオキシリボースはDNAの成分です。RNAはたんぱく質の合成に使われ、DNAは遺伝子の本体です。六炭糖には、何度も出てきたグルコース、フルクトース、ガラクトースがあり、これらは人間が活動するためのエネルギーのもとになります。

少糖類

少糖類は、単糖がグリコシド結合した数によって、二糖類、三糖類、四糖類などに分かれます。大切なのは二糖類です。

  • スクロース(ショ糖):グルコース+フルクトース。砂糖の主成分で、さとうきびに多い
  • ラクトース(乳糖):グルコース+ガラクトース。動物の乳に多い
  • マルトース(麦芽糖):グルコース+グルコース。麦芽に多い

多糖類

多糖類は、単糖がもっとたくさんつながったもので、でんぷんやグリコーゲンがあります。でんぷんはグルコースだけでできています。でんぷんやグルコース→ グリコーゲンは加水分解によってマルトースになり、さらにグルコースまで分解されて、体の中で使われます。少糖類や単糖類も、体の中で単糖にまで分解されて、エネルギーのもとになります。

旧記事では、ここにWikipediaから引用した「糖質のより詳しい分類」の一覧を載せていましたが、専門的すぎるため省きました。

異性化糖(ぶどう糖果糖液糖)ってなに?

清涼飲料水の原材料ラベルを見ると、「ぶどう糖果糖液糖」や「果糖ぶどう糖液糖」など、なんとも甘い名前の原材料が入っています。これは「異性化糖」と呼ばれるものです。上の分類の中にも、果糖液糖や異性化糖は出てきていません。これは何なのでしょう。

異性化糖は、でんぷんから人工的につくられます。3回の酵素反応(液化、糖化、異性化)と、精製、濃縮が必要です。果糖(フルクトース)の割合によって、次のように呼び分けられます。

  • 高果糖液糖:果糖の割合が90%以上
  • 果糖ぶどう糖液糖:果糖の割合が50%以上90%未満
  • ぶどう糖果糖液糖:果糖の割合が50%未満

低い温度では砂糖より甘く感じるため、清涼飲料水や氷菓子によく使われています。大量生産ができて値段も安いので、食品加工には欠かせない糖です。

砂糖よりもカロリーが低いので、ダイエット商品にもよく使われていますね。でも、しょせんは糖です。アメリカで肥満が増えたのも、この異性化糖のせいではないかといわれています。→ という説もあります。ちなみに、ヨーロッパ(EU)では、異性化糖はあまり使われていません。

異性化糖の1gあたりのカロリーは、砂糖とほぼ同じです。果糖は冷やすと甘みを強く感じるため、冷たい飲み物では同じ甘さを少ない量で出せることはありますが、よく使われる主な理由は、値段が安いことと、液体で扱いやすいことです。

エリスリトールってなに?

単糖の一部が変化した化合物に「糖アルコール」があります。有名なのはキシリトールです。

糖アルコールは、砂糖よりも甘みが弱めです。小腸で吸収されないので、→ 多くの糖アルコールは小腸で吸収されにくいので、ふつうの砂糖とくらべて血糖値の上がり方が小さいのが特徴です。とりすぎると、下痢などの原因になります。

エリスリトールも糖アルコールで、ぶどう糖を発酵させてつくられます。糖アルコールの中で唯一、血糖値を上げないとされているので、→ エリスリトールは、小腸で吸収されてもほとんど使われずに尿に出ていくため、血糖値をほとんど上げません。そのため、糖質制限食を実践している方に人気です。

人工甘味料ってなに?

ここまでお話しした糖質は、基本的には天然の甘味料です(人工的につくられる場合も含みます)。

人工甘味料は合成甘味料とも呼ばれ、人工的に合成してつくられます。コストがとても安いため、食品加工に大量に使われています。アスパルテーム、スクラロース、サッカリンなどです。安い加工品の裏側の表示を見ると、よく使われていますよね。「カロリーゼロ」「カロリーオフ」とうたった甘い商品には、この人工甘味料が使われています。

でも実は、砂糖以上に太る危険もあります。人工甘味料は人間の脳をだまし、口にしたとたん、脳は血糖値を下げようと働きかけます。ところが実際には糖質が入ってこないため、低血糖になります。低血糖は激しい食欲をともない、さらに糖質をほしがります。それによって食べすぎが起き、太ってしまいます。気をつけないといけないですね。

人工甘味料が食欲や体に与える影響については、いまも研究が続いています。WHO(世界保健機関)は2023年、体重を減らす目的で人工甘味料を使わないよう勧めるガイドラインを出しています。

糖質のなにが問題なの?

糖質は、3大栄養素の中で唯一、直接血糖値を上げます(高血糖)。血糖値が上がると、インスリンが出ます。インスリンは別名「太るホルモン」とも呼ばれています。

糖質をとりすぎると、すい臓からインスリンがたくさん出て、とった糖質をせっせと脂肪に変えていきます。インスリンが血糖値を下げていくのです(グリコーゲンとして肝臓にたくわえられるものもあります)。

もちろん糖質はエネルギーにもなるので、きちんと使われれば脂肪にはなりません。でも、いまの時代、あらゆる食事にかなりの量の糖質がまぎれ込んでいます。デスクワークなどで運動不足なのに、ごはん、パン、ラーメンなど糖質中心の食事をしていると、脂肪はたまる一方です。高血糖からインスリンによって低血糖になる途中で、眠気にも襲われます。

実は、太っている人には低血糖症が多いそうです。低血糖症は、インスリンが出やすく、血液中の糖分が少ない状態です。少しの糖質をとっただけでも、あっという間にたくさんのインスリンが出て、糖質を脂肪に変えてしまいます。やせている方でも、筋肉が少なく体脂肪が多い「隠れ肥満」の方には、低血糖症が多いようです。

人によっては、食後に血糖値が大きく上がったり下がったりしやすい(いわゆる血糖値スパイク)といわれています。

そして、インスリンの出すぎによって、いずれすい臓の働きがこわれ、血糖値を下げられずに高血糖の状態が続くようになります。これが糖尿病です。

糖質のとりすぎや肥満が続くと、インスリンの効きが悪くなったり、出る量が減ったりして、2型糖尿病につながることがあります。

たんぱく質や脂質は、血糖値を上げることがありません。つまりインスリンを出させないので、高血糖にも低血糖にもしません。そして、うれしいことに、脂肪も増やしません。→ ほとんど上げません(たんぱく質も、インスリンを少し出させます)。

お肉を食べても太りません。脂をとっても太りません。太る原因は糖質だけなのです。→ 糖質のとりすぎは、太る大きな原因です。お肉や脂だけを悪者にせず、食事全体で考えましょう。糖質をとると血糖値が上がり、すい臓からインスリンが出て、せっせと脂肪に変えます。血糖値に直接影響を与えるのは、糖質だけなのです。

次回は、これまでのまとめとして、たんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)がどのように代謝されてエネルギーになるのかを、さらに詳しく見ていきます。糖新生やコレステロールの代謝についてもお話しします。→ お肉の栄養(4)栄養学と糖質制限


この記事は、九州肉屋.jpの連載「学問所通信」第12回(2014年12月)を、2026年に加筆・更新したものです。

参考:WHO 非糖質系甘味料の使用に関するガイドライン(国立医薬品食品衛生研究所)/日本人の食事摂取基準の紹介(農林水産省)

お肉と栄養についての質問は、LINE公式アカウントからお気軽にどうぞ。